大好きなサザンオールスターズの曲の中に、「旅姿6人衆」という曲がある。その中で出てくる歌詞に、まさに広告・コミュニケーションの世界で働く人々を描いているようなフレーズが存在する。
喜びや悲しみだけじゃない、つらい思いさえ…
華やかなものの陰でいま、動く男たち…
この歌を聴いてつくづく思うのは、我々の広告コミュニケーションの仕事というのは、所詮裏方だということだ。ただ、我々が裏で支えなければ表舞台は成り立たない。
列車が眠る車両基地で
電車を利用したことがある方はご存じでしょうが、電車の車内には中づりや額面等の広告を掲載するスペースがある。そこに掲載する予定のポスターに誤植が見つかった。広告主はJR東日本。ポスターはもうすでにセッティングされている。しかし、間違った内容を告知するわけにはいかない。
そこで、急遽ポスターを擦り直し、特別に列車が寝静まった車両基地で、始発を迎えるまでに全てを架け替えなければならない。不謹慎ではあるが、タイムリミットがある映画のワンシーンのように、ドキドキしながら作業をしたことがあった。
誰もいないかと思われた車両基地は、始発までの間車両を点検する人たちが大勢いた。この人達は終電から始発までのわずかな時間が勝負なのだ。決して間違いがあってはならない。事故につながる因子は早期に潰しておかなくてはならない。その緊張感がこちらにも伝わってくる。
誰も見ていないし、誰にも褒められない。しかしこの作業をおこなわないと、一日役1000万人もの乗客に謝った情報を伝えてしまうことになる。ただ黙々とポスターを貼り替えていく。
夜が明ける頃、何とも言えない達成感を味わった。
人が寝静まった町中の新聞販売店で
これも誤植の話になるが、新聞の折り込みチラシに誤植が見つかった。状況としてはすでに新聞販売店に折り込みチラシは納品済み。
チラシの内容は携帯電話の新機種告知。その誤植チラシを持ってお客様が携帯の販売店に詰めかけると、キャリア本部にクレームが上がることになります。携帯電話の販売は、メーカー、DOCOMOなどのキャリア、そして販売店経営とし組織が分かれており、実は一番力が強かったりするのはお客様に対峙する販売店だったりします。
そこで、急遽チラシを刷り直し、朝刊が配られる前に新聞の販売店で誤植チラシ抜き変えるというミッションを断行しました。しかし、新聞の販売店は一カ所ではなく何軒かに分かれています。
暗闇の中、インクの匂いがプンプンする大量のチラシを持って駆け回る姿は異様だった。