もう20年も以前の話になるんですが、自分の仕事人生の中で究極のピンチに落ちいったときに、松任谷由実さんに助けて頂きました。
おそらくご本人は覚えてもいらっしゃらないでしょうが、ユーミンの鶴の一声で目の前の霧が晴れ、私だけでなく私のチーム、私の会社が救われたのです。
案件は、20年以上も前に当時画期的だったと言われた携帯電話の新端末が登場します。その新型携帯電話の機種の魅力を最大限に訴求し、想定ターゲットである20代~30代のユーザーを取り込むこと。
しかし、新型の携帯電話といってもキャリアメール(iモードメール)の送受信やウェブページ閲覧などができる世界初の携帯電話IP接続サービスという聞きなれない機能がなかなかメリットとして実感されにくかったのです。
そこで直感的に分かるメリットとして、いままで電話とメールくらいしか使用してこなかった携帯電話に、新しい機能としてコンサートが予約できるということを訴求するコミュニケーション戦略を考えたのです。
アーティストの力を借りて、新端末iモードを売り出そうとしました。
目次
グループアーティストの裏切り?
アーティストとのタイアップは、自社のプロモーション担当からアーティストサイドへ行うことになりますが、この時の担当者がよくわかっていなかったのか、許可取りをコンサートを仕切るプロモーターに行ってしまいました。
プロモーターというのは興行主ともいわれ、よく聞く有名どころにはウド―音楽事務所などがあったりします。そういう会社が各エリアごとにあったりします。
だから、この場合プロモーターにOKをもらってもアーティストサイドにはなにも話が通ってないことも起こりえますし、実際この時もそうでした。
そして、CMや新聞広告やポスターなどを完成させたギリギリ直前になって、アーティストサイドからダメ出しを受けることになりました。
当時は、「あの●●●●の野郎、土壇場になって裏切りやがってぇ」などといきり立ったのですが、アーティストに話を通さずにプロモーターと話をしてたウチ側の担当の強力なやらかしです。
伝説のプロデューサー
アーティストとしてみたら、オレらの知らないとこで何やっちゃってくれてんの?となりますし、再度話をしようにもこじれてしまって修復の可能性も見えません。
仕事が成立しないと、数億の売り上げが無くなりますし制作したものに関しては損失が出ます。ただ一番ツラいのは、今まで築き上げてきたクライアントととの信頼関係が崩れてしまうことでした。
そこで私は今までの仕事人生の中で最も信頼できる元電通のプロデューサーに相談することにしました。ただ、この方と対峙するには覚悟を決めて本気でかからないといけません。躊躇したり逃げようとしたりすることが絶対に許されない方なので。
けれど、本気でぶつかれば必ず何らかの結果までたどり着かさせてくれる方です。いまは一縷の望みをもって、窮地の現状を話してとにかく相談しました。
由美さんは姉御肌
プロデューサーにもともと多くのルートがあるのは承知していましたが、私の相談後にすぐユーミンに連絡してくれました。というのもクライアントのキーマンがユーミンの格別なファンであることを知っていたので、飛んでしまった企画の代案としてユーミンだったら大丈夫だろうという判断と、アーティスとの格としても申し分ないと考えたからです。
プロデューサーからの返事は翌日ありました。こちらの事情を聞いてユーミンがOKしてくれたという連絡でした。ただし条件があって企画に登場するのは「あたしが最初じゃいやよ」ということでした。
何かの想いがあってのことなんでしょう。急遽、音楽プロデューサーも加わり、すぐユーミンの前に企画に加わるアーティスト候補が選ばれました。
なぜか青森へ
加わった方がとても力のある音楽プロデューサーで、アーティスト候補はすぐに出てきましたが、企画への参加について一刻でも早く承諾をもらはなくてはなりません。
アーティストは山崎まさよし。その日の夜に青森でコンサートがあるのでそこで交渉を…という話になりました。しかし、当時私が広島にいてどうやっても夜の青森にはたどり着きません。時刻表を睨みながらやっとみつけたルートが札幌(新千歳)トランジット!
青森のコンサート会場に着くころに猛吹雪になって、演出されたかのように全身に雪をまとったまま会場控室でチーフマネージャーと話をしたのを覚えています。
企画は大成功しました。
おそらくユーミンは覚えていないでしょうが(笑)、あのとき私と、私のチームと、私の会社を救ってくれたのは、間違いなくユーミンです。